公認会計士が不正に遭遇する確率は高くない 経営者不正は内部通報、従業員不正は内部統制での発見が多いです

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監査法人に勤務しているころ、大きな粉飾決算に関する仕事に関わることがありました。監査人として直接担当していたクライアントではありませんでしたが、意見表明した後に粉飾が発覚してしまうとどれほど大きな影響があるかを身をもって経験しました。ですが、実際に監査の現場で不正に遭遇したことは1度もありません。私以上に監査経験を積んだ方でもそれほど多くはないようです。

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不正に関する調査結果で半数以上の公認会計士は不正に遭遇していない

粉飾決算などは不正の最もわかりやすい例ですが、そもそも会計における”不正”がどのようなものかと言うと、法律や会計のルールを破って不当に利益を得る意図的な行為のことで、具体的には1.横領や着服といった使い込みと2.粉飾決算(実態がないのに、決算書上でだけ利益や財産を水増しすること)が該当します。

では、公認会計士が行う監査がどのような仕事かというと、「それを知っていれば取引先が取引を取りやめてしまうような、決算書上の大きな誤りがないかどうか」の調査を行うことです。

もう少し具体的に説明しましょう。
決算書上の利益が5億円を越えればその会社の株式を買う方針でいる投資家がいるとします。会社の決算書の利益を見ると6億円だったため、方針に従って株式を購入。
ところが、実際には利益の水増しがあり、利益は2億円しかなかったと言う場合、この水増しされた利益4億円が分かっていれば、投資家は株式を買うことはなかったはずです。

このような、「投資家、取引先、金融機関等の意思決定を変えてしまうような決算書上の大きな誤りがないかどうかを調査する」のが、公認会計士が行う監査なのです。

ここでのポイントは、”大きな”というところで、その裏には「全ての誤りを発見する必要は無い」ということでもあるのです。仮に先ほどの例で粉飾された利益が50万円だったとしましょう。利益6億円に対して50万円が水増し。この程度なら投資家も取引先も意思決定を変えることは無いでしょう。なので、このレベルの誤りまで見つけることは監査では求められていないのです。監査で気にするのはあくまで”大きな”決算書上の誤りと言うことになります。
とはいえ、不正は決算書上の大きな誤りの原因になるもの。公認会計士は当然不正にも目を光らせていますが、実際に監査を通じてどれくらい不正に遭遇しているのでしょうか。公認会計士協会が実施した調査があります。

10年以上のキャリアを持つ会計士でも、半数以上は監査を通じて不正に遭遇していない

今年の5月23日に日本公認会計士協会からリリースされた『監査業務と不正等に関する実態調査』では公認会計士が監査を通じて不正に遭遇した件数を調査しています。結果は次の通りです。

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(日本公認会計士協会『監査業務と不正等に関する実態調査』「合計件数別人数」より)

調査内容について補足しておくと、対象となっている会計士は会計士登録後10年以上の言わばベテランの会計士で、十分なキャリアを残されている方々です。ほとんどの方が現在も監査の現場にたたれていますから、信憑性のある数字です。

調査結果については人によって感想は違うと思いますが、私は「意外に少ないんだな」と感じました。先に申し上げたとおり、監査の仕事は決算書上の大きな誤りがないかどうかを調査することですから、不正を洗い出すようなことはしないのですが、それでも長く監査をやっていればいくつかの事件に遭遇してもおかしくないのではないかと想像したのです。

ところが、調査結果からは会計士登録10年以上のベテランでも半数以上が監査を通じて不正に遭遇したことはないというのですから、意外に感じました。裏を返すと、監査を必要とするような大きな会社の場合、内部統制がかなりしっかりしていますから、内部統制によって不正に対する抑止が十分に機能しているのではないかと考えられます。
社内での不正発見については別の調査結果も出ています。

不正の発見は内部統制と通報制度から

今年の10月16日に株式会社KPMG FASが、日本企業における不正の実態把握を目的とした「日本企業の不正に関する実態調査」をリリースしています。

この調査では2011年1月から2013年12月までの3年に起こった上場企業の粉飾決算と横領の不正を抽出して調査しています。有益な調査結果がたくさん報告されていますが、中でも注目すべきなのが不正発覚の経緯です。
従来は通報制度が最多でしたが、今回の調査では業務処理統制(日常的に行われている従業員間のチェックなどの仕組み。たとえば、入金処理と入金記録は別の人が担当し、誤りが無いかチェックするなどの仕組み)が最多になっています。この点は内部統制報告制度の導入とともに、各企業の内部統制が正しく整備されて有効に機能していることを証明していると言えるでしょう。

その一方で、不正の内容と発覚の経緯の関係にも注目する必要があります。というのも、経営者が関わった不正については従来通り通報制度による発覚が最も多く、従業員の不正については業務処理統制が多くなっている点です。
つまり、経営者不正については内部統制での抑止は限界があり、通報制度などの別ルートでの報告の体制が必要なことも明らかになっています。

このように、会社内部でも内部統制や通報制度により不正を発見、抑止する仕組みが機能していることが分かりました。この点は公認会計士が監査をする前に、会社自らが不正を発見して調査を行い結果の報告を受ける形が多くなり、会計士が監査の過程で不正を見つける確率を小さくしているようにも思います。
私自身、監査を通じての不正は発見していませんが(ミスの発見は何度かあります)、クライアントが独自に調査を行ってその結果報告を受けた経験は何度かあります。

まとめ

不正防止については、まず通報制度、内部統制の充実など内部の体制を整えることが第一ですが、監査等による外からの目を利用することも有効です。外部の目があることによって社内の不正に対する意識が高まり、結果的に不正の抑止、早期発見へとつながるからです。
<おまけ>
クライアントの決算書を拝見するときは、第一には黒字化と財務体質の健全化の視点を持っていますが、同時に不正に対する視点も持つようにしています。
おかしな数字の動きがあるとどうしても気になるのは監査の経験が大きいと感じています。

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