リアルサカつくで生き残るためには

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「Jリーグプロサッカークラブを作ろう」というゲームがあります。サッカークラブのオーナーになってクラブを強くしながら経営まで行うシミュレーションゲームです。気ままな経営は許されず、赤字が出たら解雇。結構きつい縛りです。今期のJリーグではサカつくさながらの制度が導入され各クラブは戦々恐々としています。クラブライセンス制度です。

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主にクラブのお金について定めたルールです

クラブライセンス制度は、Jリーグのクラブが守らなければならないルールで、これが守れないとJリーグから出て行かなければいけません。組織、施設、競技など様々な基準がありますが特に重要なのがお金についての基準(財務基準)です。

具体的には
1.3期連続の赤字、2.債務超過、のどちらかに該当するとライセンスがもらえずJリーグを退会することになります。おおまかに説明すると、

1.は売上から経費をひいてマイナスになった年が3年続いた時
2.は資産(将来入ってくるお金と今あるお金の合計)から負債(将来出ていくお金の合計)をひいた残りがマイナスになった時

と言うことになります。そして、その審査を行う最初の年が今年の年度末なのです。Jリーグクラブ消滅の危機と度々取り上げられ、国内サッカー衰退を印象づけるようなニュースの中身はこのようなものです。

窮地に立つスモールクラブはどうしたのか

クラブライセンス制度の適用とその審査が行われる時が迫っています。既にJリーグにいるクラブ、将来Jリーグに入りたいクラブはこの基準を何としてもクリアしなければなりません。特に苦しいのは親会社を持たない地方のスモールクラブです。母体となる親会社があるクラブは、親会社からの資金援助が期待できるため、特に問題はありません。ですが、親会社のないクラブは自力でお金を作る必要がありその目処が立つまでは安心できないのです。後がないクラブは一刻も早くこの事態から逃れようと奥の手を使いました。ファンからの募金です。この募金は馬鹿にできないほど大きいもので、既に実施したクラブはほぼ当初の目標を達成しクラブライセンスの基準をクリアする見通しが立っています。

でも、ですよ。スモールクラブならではの事情はありますし、ファンの愛を感じる美しいお話だとも思いますが、募金を当てにする経営ってどうなんでしょう。自分の力で売上を十分に増やすことも、お金を集めることも、値引きや借金の減額交渉もできない、何をやっても上手くいかないので助けてくださいと告白しているようなものじゃないでしょうか。経営としては失敗、サカつくならゲームオーバーです。今後、スモールクラブが存続しその先にあるJ1への階段を上るために経営面で改善するべき点を考えてみます。

経営上の問題点を見ていきます

取り上げるのは募金で経営を立て直したJ2に所属する3チーム、ロアッソ熊本、栃木SC、ザスパクサツ群馬、です。

ロアッソ熊本

主要な項目を3期並べます。データの都合上変則ですが、2010年度、2012年度、2013年度、で比較していますことをご了承下さい。

Performance report roasso
(「Jクラブ個別経営情報開示資料」より 単位は万円)

ロアッソ熊本がクラブライセンス制度で引っかかったのは債務超過の基準でした。昨年末の時点で債務超過が6,100万円になっていたのです。その原因を探るために表の最終行をにある当期純利益を見てみます。
2012年1月に7千万円、2013年1月で2千3百万円と合計で9千3百万円の赤字になっています。赤字はクラブの財産からマイナスされますから、債務超過を大きくするものです。また、赤字額は債務超過の額を上回っていますから、仮にこの赤字がなければ債務超過を免れた計算になります。つまり、ここ数年で出してしまった赤字こそが債務超過の原因だったのです。
ロアッソは赤字に対する意識が鈍くなり、それを改善するタイミングを失ってしまったために、債務超過を招いたのでしょう。目指すべきは赤字の原因を把握してそれを意識し、黒字体質へ転換できるように経営の仕組みを変えることです。

赤字を黒字に変えるためには2つの方法しかありません。1つは売上を増やす、もう一つは経費を減らす、です。当たり前のようですがこれ以外にありません。
ロアッソの売上を見てみると、売上の要である広告料収入、入場料収入、は一時落ち込んだものの回復基調にあり、今後も順調に伸びていくと考えられます。この2つは少しずつ伸びていく性質のものであり一気に増えることを期待すべきではありません。それを実現しようとすると営業面で無理が出て挫折することは目に見えています。ですので、売上についてはこのまま継続すれば良いと判断します。

次に経費です。ここでは経費の中でもその金額の大きい人件費と販管費に注目します。人件費は選手年俸とほぼ同じ意味で優れた選手を雇うと人件費は高くなります。販管費は内容が明らかにされていないので正確には分かりませんがスタッフの給与やクラブオフィス、練習場等の賃借料、備品の購入費などが含まれると考えられます。この人件費と販管費を考えるために売上高に対する人件費の比率を人件費率、売上高に対する販管費の比率を販管費率として計算しています。売上高はその会社の取引規模を示しているので、売上と比較することで経費の大きさが適切かどうかを判断する指標になります。

人件費率を見ると、37%、40%、37%になっています。J2リーグ平均が39%ですから、平均的な水準です。しかし、この比率では赤字になっているのが現状ですからリーグ全体が高すぎると考えるべきでしょう。また、同様に販管費率を見ると24%、38%、35%でJ2平均32%と比べると高めで推移しています。内容を正確に把握しなければ何とも言えませんが数字だけから考えるとこれも削減対象にするべきでしょう。目安とする水準ですが売上高をベースに考えると人件費率を35%、販管費率を30%にまで下げて漸く黒字化が見えてきますので現状から人件費率、販管費率ともに2-3%下げるような改善が必要です。

これまでは、必要な経費を積み上げて予算を作成していたと考えられるので、まずは実現可能な水準で売上の予算を立て、そこから妥当な経費の額を割り当てるという手順で経費の予算を立てるべきです。仕組みを変えることで発想を変えることは可能です。堅実な売上の伸びを見れば、ロアッソには熱いファンとその期待に応えられるクラブの力がある事が分かります。やり方を間違えなければ着実に伸びていけると思いますので是非この苦境を乗り切ってもらいたいです。

栃木SC

Performance report tochigi

栃木SCはロアッソ熊本と同様で債務超過の基準に引っかかりました。昨年度末の時点で債務超過1億5千万円。その原因もロアッソと同様でここ数年の赤字の累積です。栃木SCは3年でのJ1昇格を目標に積極的な投資を行いましたがそれが裏目に出て赤字をだしてしまったのです。このJ1昇格を目標にした戦略を批判する方も多いのですが私はそうは思いません。どんな会社でもどこかで大きく投資して勝負に出なければならないときがあります。もちろん失敗することもありますが、それでもそこでチャレンジしないことが会社としての伸びしろを奪うことにもなりかねません。なにより挑戦しない会社という雰囲気が社内に蔓延すれば縮小指向が強くなり消極的な意思決定しかできない体質になっていくことが怖いことなのです。

話を戻します。投資の失敗は失敗で仕方がありません。上手くいかなければもう一度始めれば良いだけです。まずは赤字を解消するところから始めましょう。原因ははっきりしています。人件費と販管費の肥大です。ここを改善するように予算を組み直せば黒字に転換することは可能です。これもロアッソと同じですが幸い売上が順調に伸びています。これを頼りにしながら次のチャンスに投資できるように力強い黒字体質にしておけばOKです。

ザスパクサツ群馬

KusatsuGumma performance report

ザスパクサツ群馬は3期連続赤字、債務超過、の両方の基準で該当しました。まず、赤字の原因を見てみます。
前出の2クラブと比べると人件費率、販管費率ともに低いですし、金額もかなり少ないです。2012年は増加しているのでここは目安である人件費率35%、販管費率30%まで削減することは必須です。とはいえ、そこまで経費が膨らんでいなかった2011年までの期間でも黒字を達成できていなかったところが頭の痛いところです。つまり、経費削減は既にかなり踏み込んで行っていてこれ以上引き下げるのは難しいところまで来ているのです。とすれば残りは売上を伸ばすことを考える必要がありますが、これも厳しい数字が並びます。

表の売上の項目を見てもらいたいのですが減少傾向なのです。特に入場料収入が伸びていないのがつらい。クラブ経営のスタートはファンを増やすこと。それができていないと、広告収入、放映権料、へと波及するビジネスの広がりがないのです。ザスパクサツ群馬はまずスタジアムへ足を運んでもらえるファンの数を増やすことを考えるべきです。そのためには販管費を引き上げて営業の体制を強化するのが良いでしょう。一時的に利益を縮小させるかもしれませんが、売上の落ち込みの方が問題です。まずは売上を増やすための体制を作り上げて安定した売上を上げることに力を注ぎましょう。群馬は高校サッカーも盛んでサッカー熱に火がつく土壌は持っているはずです。厳しい状況ですが眠っているファンの存在を信じて是非立て直してほしいです。

本当にクラブ経営の問題か

ここまで、苦しむスモールクラブの現状を見てきましたが、一つ考えておくべき事があります。それはクラブライセンス制度の妥当性です。クラブ経営が行き詰まらないように作った制度ですが、この制度が足かせになってクラブ経営が上手く回らなくなるリスクも同時にはらんでいると思っています。栃木SCの所で触れましたが、クラブにはしかるべきタイミングで投資を実行し規模の拡大を図ることも必要です。クラブライセンスの関係でその投資を躊躇するあるいは投資や赤字を必要以上に怖がって現状維持もしくは縮小を指向するようになることは、クラブだけでなくリーグ自体を小さくすることにもつながります。また、それほど大きな赤字が出ていなくても赤字と言うだけでクラブ存続の危機という風評が流れ、クラブへのイメージが悪化しまたクラブ経営を萎縮させるような力が働く可能性があります。クラブのためと言いながら、それがリーグの首を絞めることになっていないか、継続した検証が必要でしょう。

まとめ

J1は2ステージ制を導入することが決まっています。
日本のプロサッカー界にある本当のリーグ戦はJ2だけ。
J2を見に行きましょう!
<おまけ>
晴れてきました。勝手に梅雨明け宣言しちゃいます!

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