会計と税法の視点の違い 実態を正しく示すか税金を確実に徴収するかで方向性が決まります

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監査の仕事を始めた頃、いつも戸惑っていたのが会計と税法の考え方の違いでした。監査の仕事をするために会計の勉強をしてきた者にとっては、税法に出てくるルールに馴染むのには時間がかかりました。

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会計と税法の違い

公認会計士として監査を行う際に頭の中にあるのは、会計上のルールです。この会計上のルールは、会社の実態を正しく数字で表すことを目的に作られています。

具体的には株式を持っている時、決算書に買った時の値段でずっと記録し続けるのは正しくなく、決算時の株価で記録するのが正しいとする考え方です。
購入したときに5,000万円だったものが、その後株価が急落して3,000万円になった場合。5,000万円ではなく3,000万円で記録するのが正しいと考えるのです。

決算書を見るのは、その会社の株を買っているファンドなどの投資家、貸付を行っている金融機関、仕入や販売を行っている取引先などです。その人たちが決算書を見る時、会社が持っている株について、次のどちらで記録した方が実態に近いと感じるでしょうか。

a.買った時の値段:5,000万円
b.決算時の株価:3,000万円

「人による」とも言えますが、通常は3,000万円で記録する方が実態に近いと感じるのではないでしょうか。マーケットで売るとしたら、その株は3,000万円にしかならないからです。

税法の場合はそうではありません。株価が下がっても一定の条件を満たさない限り、買ったときの金額(上の例なら5,000万円)で記録し続けることになります。
この辺が、監査を始めた頃に
「税法にはどんな理屈があるんだ?」
「全然違う世界で意味が分からん」
と思った所で、傾向として会計のルールから離れようという意図があるようにすら感じていました。


これは、税法の目的が会計の目的と異なることが原因です。会計は会社の実態を数字で正しく示すことが目的でしたが、税法の場合は確実に税金を徴収することにあります。


法人の納税額の計算は「利益(「課税所得」と言います)×税率」。できるだけ確実に税金を徴収するためには利益(課税所得)が多くなるように、ルールを作りたいと考えます。すると、認められる範囲で利益が多くなる方をルールとして選ぶようになる、その結果が会計と税法の違いとなって現れるのです。


もちろん、税法でも会計のルールから完全に逸脱するようなルールを決めることはできません。先に挙げた「株の評価をいくらにするか」については会計上も議論のあるところで、「買ったときの金額を記録し続けるべき」という考え方もあるのです。税法ではその考え方を根拠にして株の評価のルールを決めているに過ぎません。


会計の世界では「会社の実態を表す数字は何か」については時代によって変化していきます。会計のルールは、その時代の投資家や金融機関などの利害関係者が要求する情報に合うように決まっていきますが、税法のルールは税金を確実に徴収すること目的に決まっているのです。

税法の強み

会計の視点からすると「どうなんだろう?」と感じるところのある税法ですが、その税法にも強みがあります。
それは、具体的なルールが決まっていること。

会計のルールにはかなり曖昧なところがあります。それは、「決算書は会社が作るものであり、実態を正しく表すための会計上の判断は会社が行うべきである」という考えの下、判断を会社に委ねている部分があるからです。


たとえば、固定資産の耐用年数について。会計の場合は経済的耐用年数といって、その資産が実際にどれくらいの期間使えるのかを、使用実績などを元にして、会社が決めるのが正しいとされています。
ですが、これを全ての資産に適用しようとすると大変で、会社によって使用目的や使用方法、使用頻度も異なるでしょうから、使用状況を調査する必要があります。正しいと考えられる耐用年数を決めるまでに、相当な労力を要するのです。

それに対して税法は、資産別に耐用年数が一律に定められています。これでは実態を正しく反映しているとは言いがたいですが、処理をする立場からすると、特に調査などを必要とせず、耐用年数をすぐに決められますから効率的です。
税法という判断の根拠もありますし安心して処理ができるというのも、心強いところです。

多くの会社では耐用年数については税法上の耐用年数を利用していて、監査をする上でもそれを容認する立場を取っています。いくら実態を正しく示すためとはいえ、実務上の効率性を度外視したルールは意味がありません。
税法の利点はこのように、基準と処理方法を明確にしてくれているところにあります。

まとめ

会計と税法をばらばらに考えると理解するのが難しいです。
両者の目的の違いを意識することで、2つのルールを深く理解することができるようになります。
<おまけ>
オフィシャルサイトのリニューアルがほぼ完了してほっとしています。しばらく、そっちに時間を取られていましたが、ようやく本を読む時間ができるので嬉しいです。

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