監査人の不正への視点 決算書上の資産に注目して調査します

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監査人として会計監査に従事する際、最も避けたいと考えていたのは不正を見逃すこと。慎重に手続きを進めていきますが、漫然と数字を眺めているだけでは何も見えてきません。不正の発生可能性が高い部分に絞って、しっかり時間をかけて調査していきます。決算書には大きく資産、負債、純資産、収益、費用、の項目がありますが、特に注意して調査するのは”資産”です。

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不正を発見するには全ての取引を調査したい ですが、それは不可能です

皆さんご存じの通り、決算書はいきなりできあがるものではありません。日々の取引を帳簿に記録して、それを勘定科目毎に集計して全体としてまとめた結果、できあがるものです。

決算書上に現れる不正にも当然、その根拠となる記録があるはずで、監査人はその記録と記録の元になった証憑を調査することで不正発見に至ります。
ですので、全ての取引をくまなく調査すれば、不正を発見できる可能性は極めて高くなります。

ところが、全ての取引を調査することは現実的ではありません。会社は日々、何百、何千という取引を行っています。決算書は1年間の取引を集計したものですから、その全てを調べるとなると膨大な時間と労力が必要です。監査法人にはたくさんの優秀な人材がいますが、その方々をしても決算から株主総会までの限られた時間の中で全ての取引を調査するのは不可能です。


全部の取引を見ることはできない中で、少しでも不正を見逃さないために、監査人が採用しているのが「リスクアプローチ」という手法です。
簡単に説明すると、
決算書上で、誤りが起こるリスクの高い勘定科目には時間を掛けてしっかりとした調査を行い、
リスクの高くない勘定科目は簡単な調査に留めるという、
監査のリソースを適切に配分して効率的に調査を行う手法のことを言います。


決算書を見てみるとたくさんの勘定科目が並んでいますが、誤りを含むリスクは勘定科目によって異なります。この勘定科目毎の特性に注目して効率よく誤りを見つけようとするのが「リスクアプローチ」ですが、「リスクアプローチ」で不正の発生する可能性が高いと判断される科目が多いのが”資産”なのです。

不正の中身は売上(収益)の水増し それでも”資産”に着目するのは過去からの蓄積が現れているから

決算書上の不正の中身は利益の水増しです

冒頭から不正の話をしてきましたが、決算書上の不正とはどのようなものかというと、一言で言えば「利益の水増し」になります。そして「利益の水増し」を指示するのは主に経営者です。
「経営者が何を目的にして不正をするか」については色々ありますが、一つは、経営が上手くいかなかった時に投資家からの追及を逃れることにあります。

経営者が決算書を作る理由は複数ありますが、第一の目的は投資家に対しての報告です。投資家は会社に対してお金を出してくれている人たちですから、会社はそのお金を使ってどのような活動をしてどれだけの成果を出したかを報告する義務があります。
会社にとっての成果とは利益のことですから、利益が少ない、まして赤字を出したということになれば、会社の最高責任者である経営者は投資家から責任を追及されることになります。経営者としては何としてもそのような事態は避けたいと考えますから、そこに決算書の不正によって利益の水増しをしようという考えが生まれるのです。

「利益の水増し」についても”資産”に注目するのは「過去の取引」を含んでいるから

不正の中身が「利益の水増し」で、「利益=売上ー経費」であることを考えると、「売上の水増し」や「経費の漏れ」などの決算書上の”収益や”費用”を中心に調査すべきと考えるのが普通です。もちろん、リスクアプローチでも”収益””費用”にも力を入れますが、それ以上に注目するのが”資産”です。その理由は”資産”には「過去の取引まで含まて記録されているから」です。

仮に、利益を水増しするために決算書上で架空の売上が記録されているとします。売上は単独では記録できませんから、同時に売上債権が記録されているはずです。つまり、その会計期間には、架空の売上が”収益”として、架空の売上債権が”資産”として、決算書に記録されることになります。


これが、次の会計期間になるとどうでしょうか。架空売上はもう過去のことですから”収益”として記録されることはありません。一方で架空の売上債権は”資産”として残ったままです(厳密に言うと架空売上も過去の利益として純資産の中に含まれていますが、”収益”としては記録されません)。
この架空の売上債権は入金の当てがありませんから、次の会計期間も、その次の会計期間も残り続けることになります。いつまでも残っている売上債権は監査人から見ればどう考えても不自然です。結果、不正の可能性を疑われることになります。

このような、「説明のつかない決算書上の記録」として表れやすいのが”資産”です。無理のある取引を記録してしまうと、段々つじつまを合わせるのが困難になっていきますが、過去からの取引を含めて記録されている”資産”ではその矛盾が現れやすいのがその理由です。
監査人が”資産”に注目して調査する理由がここにあります。

まとめ

決算書上の不正は、時を追う毎につじつまが合わなくなり、いつか必ずばれます。特に、過去の取引を含めて記録されている”資産”から
発覚することが多く、監査人もそこに注目して調査しているのです。
<おまけ>
Jリーグは残り僅かとなりました。現時点で監督の退任が決まっているチームがJ1で5名、J2も5名。さらに辞任、もしくは解任が噂されるチームがいくつかありますので、来期は監督の人事が注目されそうです。
十分な予算がないスモールクラブは苦しいですが、何とか良い監督と巡りあって面白いチームを作り上げて欲しいと思っています。

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