仕入債務(買掛金)の監査 売掛金と同じく重要な科目ですが、異なる視点が必要です

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決算書上、仕入債務(買掛金)は金額も大きく重要性の高い科目です。以前、売掛金の監査について見ていきましたが、今回は、買掛金の監査について触れます。

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網羅性の観点から監査します

買掛金は決算書上も、監査上も重要な科目です

買掛金は、メインになる事業の仕入から発生した、将来の支払い義務のことです。


伊勢丹なら、仕入れた服や食品、トヨタなら、仕入れた車の部品の、「将来の支払い」が該当します。


メインの事業に関連する仕入なので、取引件数が多く、金額も大きくなることが多いので、監査上も重要な科目です。


「取引件数が多く、金額も大きい」ことに着目すると、似た科目として、売掛金があります。

売掛金は、「記録された金額通り、実際に存在するかどうか」 
   買掛金は、「全ての仕入が漏れなく記録されているか」を見る

売掛金は、「売上によって、将来会社に入ってくるお金」のこと。


売掛金、買掛金、ともに監査上重要な科目ですが、監査で注目すべきポイントは、大きく異なります。


それは、監査の基礎となる考え方、から生まれる違いです。


その考え方というのは、


「利益の水増しになる方向を重視する」


こと。


より具体的に言うと、


「売上を大きく、経費を小さく、する不正に注意せよ」

(「利益=売上ー経費」の式を思い浮かべて下さい)


ということです。


この考え方は、


「決算書の粉飾は、経営者が自社の業績をよく見せようとする時に行われる」


という事実に基づいて生まれたもの。


シンプルですが、監査のベースになる極めて重要な考え方です。


これを、売掛金と買掛金に当てはめて考えると、


売掛金は、売上とともに記録されますから、売掛金を増やす方向に粉飾されやすい。

スクリーンショット 2015 02 03 12 56 18


ですので、


「決算書に記録された金額が、実際に存在するのか」


を確かめるための監査が中心になります。
(実際に存在しない売上(売掛金)が記録されていると、売上が実態より大きくなってしまいます。)


反対に、買掛金は、経費(仕入)とともに記録されますから、買掛金が少なくなる方向に粉飾されやすい。

スクリーンショット 2015 02 03 12 56 50


ですので、


「全ての買掛金が漏れなく記録されているか」


を確かめる監査が中心になります。
(経費(=仕入=買掛金)に漏れがあると、その分経費が小さくなり、利益を増やすことになります)

売掛金についてはこちらの記事(”売上債権(売掛金)の監査”)で見ましたので、ここでは、買掛金の監査について見ていきます。

買掛金の監査手続

具体的には次のような方法で調査していきます。

1.前期比較

買掛金残高の推移を見ます。
前期末と当期末の残高を比較して、異常な変動がないかをチェック。

スクリーンショット 2015 02 03 14 14 00
(出典:トヨタ自動車WEBサイト IRライブラリ)


トヨタ自動車さんの、平成26年3月決算から、単体の貸借対照表の数字をお借りしました。


上の表のように、増減額と増減率を求め、金額の変動に異常が無いかを確認します。


通常、会社の事業規模が急激に変化することはありません。
おおまかには、前年度と同程度の金額で推移するはずです。


もし、ここで大きな変動があれば、合併や事業譲渡など、ビジネス上の大きな変化があり、その影響を受けたことが考えられます。


もし、そのようなビジネスでの変化がなければ、粉飾の可能性を疑うことになります。


前期比較は、大きな数字の傾向を掴むため、また、監査を行う上での注目すべきポイントをつかむために行います。


上のトヨタ自動車さんの例で言うと、金額は大きく見えますが(単位は百万円)、増減率は1,7%ですからほとんど変動はないと判断されます。


ビジネス上の変化がなければ、合理的な金額と考えられるため、 「あまりリスクはないだろう」と推測されます。
(ただし、金額自体が大きいので、監査手続自体は慎重に行われます。)

2.残高確認

決算書に記録された金額が正しいかどうかを、文書で問い合わせる手続です。


自社の買掛金は、仕入れ先にとって売掛金になりますから、正しく処理されていれば、その金額は、お互い一致するはずです。

スクリーンショット 2015 02 03 14 26 47


そこで、


「当期末、あなたの会社のトヨタ自動車からの入金予定(売掛金)は、いくら残ってますか」
(トヨタ自動車は例です)」


と仕入先に質問して、金額を書いた文書を送付してもらうのです。


一致していれば、会社の記録が正しいことになりますし、一致していなければ、原因を調査します。


差異の原因の調査過程で、会計記録に漏れがあることが分かることもあります。

3.回転期間分析

仕入債務の回転期間を計算します。
仕入債務回転期間は、「期末の仕入債務が、仕入の何ヶ月分残っているか」を意味します。


例を挙げてみましょう。
ある会社の初年度の仕入と買掛金の関係を考えます。


毎月同じ金額の仕入があり、
支払いは、2ヶ月後の月末になるように、仕入れ先との契約で決めているとします。


すると、「仕入」と「買掛金」と「お金」の流れは次のようになります。

スクリーンショット 2015 02 03 14 35 52


金額で整理すると、


仕入:1,000(月)×12ヶ月=12,000

買掛金: 1,000(月)×12ヶ月=12,000(仕入とともに増加)
△ 1,000(月)×10ヶ月=10,000(支払いに拠って減少)         
買掛金残高: 12,000ー10,000=2,000


このようになります。


最初に、仕入債務回転期間分析では、


「買掛金の残高が、仕入額の何ヶ月分にあたるか」


を意味する、と申し上げましたが、別の言い方をすれば、


いつの仕入債務から支払が止まっているか


とも捉えることができます。


「仕入債務回転期間が2ヶ月」と言われたら、上の図をイメージしながら、


「期末の2ヶ月前から支払いが止まっている」


と考えるとスムーズに理解できるでしょう。


仕入債務回転期間とその求め方を整理しておくと、

スクリーンショット 2015 02 03 14 51 52


このようになります。


通常なら、仕入先と契約した支払いまでの期間(支払いサイト)だけ、期末に残っているはずです。


契約している支払いまでの期間から、外れてくる場合は粉飾のリスクが高くなります。

4.請求書・明細レビュー

買掛金の監査で重要な視点は、


「全ての買掛金が漏れなく記録されているか」


でした。


この視点からは、請求書や買掛金明細のレビューが重要になります。


何を見るかというと、


・請求書の中に、記録されていないものがないか

・請求書の中に、当期記録すべきものが翌期分として
処理されているものはないか


です。


取引の件数が多いので、ピンポイントで記録の漏れを見つけるのは難しいですし、全ての請求書を会社側が提出するかどうかも分かりません。


その点では、監査上どの程度有効な手段と言えるかは、議論の余地があります。


ですが、会社側に、そのような視点で監査をしていることが伝わることで、日常的な会計記録について、漏れなく記録することを意識してもらえる効果を見込めます。

5.ヒアリング

異常のような手段を使って調査した結果、疑問があれば、話を聞きます。


聞いた話でも監査の上では、立派な証拠です。


重要な内容については、必ず担当者ではなく責任者から直接話を聞いて、取引内容を確認し、数字に問題が無いかを判断していきます。

漏れがないことを確かめるのは難しい 
   内部統制による業務管理が鍵になります

監査で、「全てが漏れなく記録されていること」を確認するのは非常に難しいことです。


決算書の数字について、漏れがあることを確かめるためには、処理された取引以外に、取引があることを発見しなければいけません。

 
現実的には、会計数値を分析して、原価率に異常な変動があった場合や、残高確認で差異が出てきた場合などに、詳細を調査して初めて、やっと漏れがあることに気づくくらいです。


そのため、「全ての取引が漏れなく記録されている」ことについては、監査の前に、会社の内部統制で担保することが重要になってきます。


会社の業務の仕組みから、会計記録に漏れがないようにしておくのです。


たとえば、商品の仕入について言えば、納品された品物について、発注書、納品書、検収書、請求書、が全て経理部に送るようなフローを作り、欠けるものがあれば経理部で調査するなど。


”モノ”と”証憑”をセットにして、管理するような内部統制を作るなどが考えられます。


網羅性については、内部統制に依存して監査することになりますが、もちろん、内部統制についてもしっかり調査しますので、それでも信頼のできる監査が可能になるのです。

まとめ

仕入債務の監査は、売掛金の監査と似ていますが、全く視点が異なります。
監査の基礎になる「利益の水増しになる方向を重視する」という考え方に沿って、「全ての取引が漏れなく記録されているか」の視点をもって、監査に臨みます。


<おまけ>
恵方巻きって、どこの風習なんでしょう。
どれくらいの方が太巻きを食べるのか、興味がわきますね。

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