シャープが「セール・アンド・リースバック取引」を使って、早期に本社売却を決めた理由

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シャープの本社ビルの売却が決まりました。金額は、本社向かいにある田辺ビルと合わせて、100数十億円になるようです。ただ、売却と言っても明け渡しは2017年。まだ移転先も決まっていない状態です。そこまでして、売却を急いだ背景には、シャープの深刻な財務体質の悪化があります。

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「セール・アンド・リースバック」で本社ビルを売却

シャープは「セール・アンド・リースバック」という方法で、本社ビルを売却しました。


英語なのでなじみがないですが、日本語に直すと、取引の中身が分かります。


「セール=(ビルを)売る」と「リースバック=借り戻す」という意味なので、

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ビルを売ると同時に、売った相手と賃貸契約を結ぶことで、 
「家賃を払いながら、今までと同じように入居し続ける」


という取引です。


「そのまま居続けるなら、何もしなくて良いはずなのに、なんでそんな面倒くさい取引をするんだろう?」


と思われると思いますが、「セール・アンド・リースバック取引」にはいくつかのメリットがあります。


中でも大きいのは、資産(シャープの場合はビル)を売ることでお金が入ってくることと、かなり小さなお金(家賃)で、今までと同じように資産を使い続けることができることです。


確かに、不動産の売却は物件によっては、かなり大きなお金が入ってくることになるので、会社の資金繰りにおいては大きいのですが、


それでも、シャープは未だに本社の移転先すら決まっていない状態で、この「セール・アンド・リースバック取引」を実行しました。


本社ビル売却の方針を含んだ再建計画を発表したのが、今年の5月14日。 
そこから売却先を探して、決まったのが昨日ですから「大急ぎで売った」というべきでしょう。


不動産を売って資金繰りに役立てることを考えれば、できるだけ多くの候補を募った上で、最も高い金額をつけてくれた相手に売るのが普通ですから、このスケジュールにはかなり無理があります。


それでも、そうしなければいけなかった理由がありました。 
シャープの深刻な財務状況です。

債務超過目前にあるシャープの財務状態

次の表とグラフを見て下さい。

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シャープの純資産の推移です。


純資産は、資産から負債を差し引いた額のこと。

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・資産=会社に今あるお金+将来入ってくるお金


・負債=将来、会社から出ていくお金


ですから、純資産は、


「将来、会社に残るお金


を意味しています。

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純資産の意味をつかんだ上で、シャープの純資産の推移をもう一度見てみると、


スクリーンショット 2015 09 03 11 00 57


「ここ数年で、どんどんお金がなくなっていて、このまま行くとゼロになってしまう」


と言うのがシャープの現状です。


何の対策も採らず、このままの状態を続けていると、来年にも債務超過に陥り、「どこかに吸収されるか」「そのまま事業をたたむか」といったことも十分考えられます。


ここまで純資産が減少してきた原因を見てみます。

純資産の減少は「機械及び運搬具」の減少が原因


資産から負債を差し引いたものが純資産ですから、純資産が減ると言うことは、「資産が減った」か「負債が増えた」かがその原因になります。


どちらにその原因があるかを確かめるために、推移を確認します。

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これを見ると、一目瞭然。資産の減少が純資産の減少の原因であることが分かりました(負債が増えていないのは意外です)。


さらに、資産の各項目の推移を見てみます。

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これを見ると、もともと金額の大きかった「機械及び運搬具」がこの4年で70%も減少しているのです。


これが純資産減少の最大の原因ですね。


で、「機械及び運搬具」が減った原因ですが、業績と深く関わっています。

「機械及び運搬具」は業績悪化を立て直すための”リストラ”で減少

シャープは、業績の方もかなり厳しい状況です。


ここ4年の売上と利益を見てみますが、

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売上は安定していますが、大きな赤字を記録する年もあるなど、その水準では利益が出ない状況です。


シャープは、人の労働力と機械を使って製品を作り、それを売ることで、利益を出す会社です。


ですが、現在の状況は、シャープの製品が市場で売れる金額よりも、 
シャープが製品を作りだす能力(=労働力+機械)を維持するコストの方が大きくなっていて、赤字になっているのです。


そこで、現在の売上に合う製造能力にするために、労働力と機械を削減して(リストラ)をして、ビジネスを立て直そうとしているのですが、


その過程で大きく「機械及び運搬具」が減り、純資産の減少を招いています。

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純資産の減少で返済能力の評価が低下 「短期借入金」が増える

ここまでで、純資産の減少の原因を見てきましたが、純資産減少の影響は、別の部分にも現れます。


金額ではあまり変化が少なかった、「負債」に対する影響です。


シャープの負債の水準はそこまで変動しているわけではありませんが、実は、1つだけ大きく増えている項目があります。


負債の各要素の推移を見てみましょう。

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流動負債で「短期借入金」が大きく増えて、 
固定負債の方では「長期借入金」が大きく減少しています。


「短期借入金」は、1年以内に返済しなければいけない借入金。 
これが増えると、すぐに使えるお金が手元にないと、マズい状態です。


「長期借入金」なら、利息さえ払えば元本の支払いは猶予されることになりますから、手元の資金が今すぐ必要な「短期借入金」とは、資金繰りの余裕の面で大きく異なりますから、


「長期借入金」が「短期借入金」に振り替わるというのは、会社の資金繰りにとって非常に大きなことなのです。


なぜ、このような状況になってしまうかというと、業績と財務状況が悪化してしまうと、シャープの返済能力に対する評価が低下して、


長期の借入が拒否され、短期の借入しか認められなくなるからです(倒産してしまうと返済してもらえませんからね)。

「セール・アンド・リースバック取引」で早期にお金を作ったのは、短期借入金が増加してしまったから

ということで、業績悪化がきっかけになり、財務状況の悪化をまねき、 
それが、返済能力の評価を引き下げ、短期の借入が増え、手元資金が必要になって…、


「『セール・アンド・リースバック取引』を使って急いで手元の資金を増やす」と。 
ここでやっと、本社売却を急いだ話がつながりました。

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まとめ

業績が悪化すると、手元資金がいっぱい必要になります。 

おまけ

シャープのビジネスは縮小の過程にあります。 
何か業績を好転させるビジネスの柱を見つけられないと、会社を切りうるしかなくなるかもしれません。

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