Jクラブ個別経営情報開示資料(平成27年度)公開! スモールクラブ達の逞しさを知る(J2編)

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Jリーグ各クラブの経営状況が公開されました。前回はJ1クラブについて見てきましたが、今回はJ2クラブを取り上げます。

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J2リーグ全体の傾向

日本のプロサッカーリーグ2部のJ2リーグには、現在22クラブが所属しています。

日本代表に選ばれるような選手はほとんどおらず、メディアへの露出も少ないので、地味なリーグのように思われますが、6位以内のプレーオフ圏内に入ればJ1昇格の可能性があるということで、多くのクラブがシーズンの最後まで激しくしのぎを削り、スリリングな展開が見られるのが特徴です。

また、クラブ間の格差がJ1より大きいのに、大きなクラブが小さなクラブに対して簡単に勝てないのも面白いところ。規模(売上)が5倍以上違うクラブの対戦でも、下位のクラブがあっさり勝ってしまうことも普通にあります。

そんな特徴をもつJ2リーグの経営状況はどうなっているのかを見ていくことにします。

まずは、概要からです。


(なお、J1リーグについてはこちらの記事で扱っています)

J2リーグの売上合計

J2リーグ所属クラブの売上合計の推移です。

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2015年度は前期から約50億円増の295億円増加率でも約20%増と大幅に増えました。これは、J1への昇格クラブ、J2への降格クラブの影響によるものです。

2015年にJ1へ昇格したのが売上約11億円(2014年実績。以下同じ)の湘南ベルマーレ、約12億円の松本山雅FC、約14億円のモンテディオ山形。

一方、J2に降格したのが売上約30億円(2015年実績。以下同じ)の大宮アルディージャ、約27億円のセレッソ大阪、約17億円の徳島ヴォルティスと、規模の小さいクラブがJ2から抜け、規模の大きいクラブがJ2に落ちてきたためにこのような大幅増になりました。

特に大宮アルディージャとセレッソ大阪の降格のインパクトは絶大です。

次に、売上の内訳を見ていきます。

広告料収入

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広告料収入は約38億円の増加で、大幅なプラスとなりました。
こちらも、ほとんどが昇格クラブ・降格クラブによる影響によるものですが(約36億円)、それ以外のクラブについても小幅ながら増加しているクラブが多くありました。

入場料収入

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入場料収入は約2.9億円増42億6千万円
増加率は7.28%と、広告料収入ほどには増えていませんが、それでも前任比プラスで推移しているのは、リーグ全体にとっても嬉しいことです。

やはり、大宮アルディージャ、セレッソ大阪のような人気クラブが降格してくると、入場料収入にも大きなインパクトがあります。

Jリーグ配分金収入

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Jリーグ配分金は、Jリーグから配分される順位賞金や放映権料などによる収入です。

Jリーグの放映権はJリーグが一括して管理していて、放送局(現在はスカパー!)から支払われる放映権料をJリーグが受け取った後、各クラブへ配分する形になっています。

放映権料は年々増加しています(2014年:48億3千万円、2015年:49億7千万円)ので、本来ならばリーグからの配分金は増えているはずですが、実際には1億7千万円減少しています。

これは、J1リーグでも同じ傾向がありますが、2014年からJ3リーグがスタートして、J3リーグにもリーグからの分配金が支払われるようになったことから、J1,J2に所属するクラブへの分配金が削られたことが大きな要因と考えられます。

その他収入

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その他収入は約8億円増加して61億円増加率も+15.5%と大幅な増加になりました。

これもJ2に降格してきた大宮、セレッソの影響が大きいと考えられますが、J1も前年から+18億円程度と大幅に増加しており、J1、J2ともに大きく増加しているということは、「昇格クラブ・降格クラブの影響」以外の他の要素も大きく影響しているはずです。

「その他収入」は主にグッズの売上などが含まれていますが、J1の方でも指摘した通り、すでに「入場料収入」を越える大きさになっていますから、もう少し細分化して開示すべきでしょう。

このように見てくると、広告料収入(+38億円、前期比+32.5%)、入場料収入(+2億9千万円、前期比+7.2%)、その他収入(+8億2千万円、前期比+15.53%)と、Jリーグ配分金を除く全ての項目で大きく増加していることが分かりました。

やはり、大宮アルディージャ、セレッソ大阪、という規模の大きなクラブが降格してくると、リーグ全体への経済的な影響も非常に大きいことが明らかになりました。

人件費

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「チーム人件費」の主な内容は、選手のサラリー(年俸)です。
能力の高いサッカー選手ほど、高いサラリーを提示されますから、選手へ支払うサラリーが大きなリーグほど、競争力の高いリーグと考える事ができます。

つまり、人件費合計が、リーグ自体の強さを測る指標になると言うことです。

この観点から2015年のJ2リーグを見てみると、2015年の「チーム人件費」合計は、前期から26億円増加して、120億4千万円増加率も+26%ですから大幅に上昇していて、2015年のJ2リーグは一気に競争力が上がったことになります。

もちろん、その原因はJ1から降格してきた大宮アルディージャとセレッソ大阪が、J1在籍時とほぼ変わらないレベルの選手を擁してJ2リーグを戦ったから。

このようなクラブがJ2に在籍していると、小さなクラブは劣勢を強いられることになりますが、同時に、J1に昇格しなくても、リーグ戦の中でJ1クラスのクラブと対戦できる環境があることで、チーム力が増し、リーグ全体の競争力を高められるメリットもあります。

1999年にJ2リーグが始まって、今年で18年目。リーグが歴史を重ねるにつれて、各クラブも経験を積み、成熟してきたことで、自分たちなりの”生き残る術”を身につけているように感じます。

その結果、クラブの人件費の多寡による選手の能力の違いだけでは、簡単に勝つことができない、難しいリーグになっています。

クラブ別の順位

次に、クラブ別の順位を見ていきます。

売上

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1位は大宮アルディージャで貫禄の30億円超え
2位以下は、磐田(29.9億円)、セレッソ大阪(27億円)、ジェフユナイテッド千葉(25億円)と続き、いずれも20億円台です。

この水準をJ1リーグ所属クラブと比較してみてみると、


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約30億円の大宮と磐田は、J1で10位、11位の清水、柏と同水準で、J1中位と同等の規模。

また、20億円台後半のセレッソ大阪、ジェフユナイテッド千葉は、J1で12位、12位の新潟、鳥栖と同水準で、同じくJ1中位の規模です。

さらに、10億円台後半の京都、徳島、福岡については、J1下位の山形、湘南、甲府と同水準で、ここまでのクラブは現状でもJ1を戦える経営規模を持っていると考える事ができます。

もちろん、J1に昇格すればスポンサーも入場料収入も増えることになりますので、その分増加しますが、J2に所属している時点で既にJ1を戦える規模のクラブがこれだけあるというのは、J2の競争がいかに激しいものかを物語っています。

一方で、J2には売上が10億円に満たないスモールクラブが半数あります。
もし、これらのスモールクラブが本気でJ1を狙うなら、上記のデータによると、最低でもJ1の下位にあたる15億円まで売上を伸ばさなければいけません。

クラブによって環境は違いますが、現状から倍、あるいは3倍以上に売上を伸ばさなければ、15億円に届かないところがほとんどで、それを実現するためには、お金持ちのオーナーが出現するか、クラブが、地域に住む多くの人達を動かせるだけの魅力と価値を持つ存在になるしかありません。

現実的には、後者を目指すことになりますが、それもアイディアと情熱のある人達が時間をかけて取り組んでようやく可能になること。現状、スモールクラブに留まっているクラブ、特に観客数で伸び悩んでいるクラブは、本気でお客さんに来てもらえるような魅力のあるクラブに生まれ変わらないと、J1は遠い夢のままで終わってしまいます。

次に、売上の内訳です。

広告料収入

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1位は21.8億円と、圧倒的な資金量を誇る大宮。
2位以下は、千葉、磐田、セレッソ、京都、徳島と続きますが、いずれも大口スポンサーがついているクラブです(大宮:NTT東日本、千葉:JR東日本・富士電機、磐田:ヤマハ、セレッソ:ヤンマー、京都:京セラ、徳島:大塚製薬)。

広告料収入は、クラブの収入に占める割合が最も大きくなりますので、大口のスポンサーがついているクラブは経営において非常に有利です。

上位以外に、2015年に大きく広告料収入が伸びたのはFC岐阜とアビスパ福岡。

FC岐阜は2014年からスポンサーに加わった日本特殊陶業とJ TRUSTグループからの広告料が増加したことが主な要因として考えられます。

また、アビスパ福岡は、福岡地所がスポンサーに加わったことが大きな要因で、具体的な金額は明かされていませんが、近年にはない大型契約(高額なスポンサー料を受け取る契約)だと報道されています。

このように見てくると、クラブの地元に資金力のある企業があるかどうか、また、その企業がプロのスポーツクラブに対して価値を感じるかどうかによって、広告料収入の多寡が決まってくるように思います。

入場料収入

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1位はセレッソ大阪で4億6千万円。
ただ、前期からの減少率が非常に大きく、J2降格がクラブにとってどれほど影響が大きいかを物語っています。

そして、注目すべきは2位のコンサドーレ札幌。
千葉、大宮と言った首都圏のクラブを抑えての2位は、大きな意味があります。入場料収入は、「お金を払って見るだけの価値がある」と感じてくれているお客さんがどれだけいるかの指標になりますから、これがリーグで2番目に大きいとなると、今後、「広告料収入」や放映権料を原資にした「Jリーグ分配金」も増えていくことが予想されるため、J1昇格に向けた準備が経営面からも進んでいることを証明することになるからです。

他に徳島が40%の減少、金沢が270%の増加になっていますが、これはJ2への降格、J1への昇格による影響によるもの。

また、アビスパ福岡が、22%増加していますが、これは、シーズン終盤に向けてJ1昇格が近づくにつれて(結果は、プレーオフを制してJ1に昇格)地元の方の関心が高まったことによる影響と考えられます。

アビスパ福岡は、2014年に経営危機を迎えていましたが、経営陣の刷新、大口スポンサーの出現、クラブのJ1昇格と、一気に状況を好転させて、現在は良い流れを生み出しています。

蛇足ですが、入場料収入の最下位は、私が応援する愛媛FCでした。
+11.6%の増加率は、喜ぶべきところですが、それでもこの水準では…。

未だ、愛媛県民に価値のある存在として認められていないことがハッキリしている訳ですから、早急にクラブの魅力を高めて価値を認めてもらえるようにならないと、

”あっ”という間につぶれるぞ!

(す、スミマセン、取り乱してしまいました)

現場の頑張りにクラブがついて行けていないのが、非常に気になります。

Jリーグ配分金

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これは厳しい結果です。J3から昇格してきた金沢を除く全てのクラブが減少しています。これは、先述の通りJ3リーグが創設されたことによりJ1、J2の配分金が削減されたことが影響と考えられます。

また、大幅に減少したセレッソ、大宮、徳島はJ2への降格による影響です。
やはり、降格の影響は大きいです。

その他収入

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グッズの売上による収入などを含む「その他収入」ですが、これほど大きく変動しているにもかかわらず、「内訳が分からないので謎だらけ」と言うのが実際のところです。(もうちょっと細かい内訳で開示してもらわないと、数字の信憑性が疑われかねません。)

よく分からないですが、強いて言うなら愛媛FCの増加は一平くんグッズの売上増加でしょうか(よう知らんけど)。

クラブ別の人件費

次は人件費です。

先述の通り選手のサラリーが主な内容ですから、この金額が多いクラブほど、能力の高い選手が集まることになるため、クラブの強さの指標になります。

結果は次の通りです。

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1位はセレッソ大阪で15.2億円、2位が大宮アルディージャの13.6億円、3位がジュビロ磐田で12.6億円、4位がジェフユナイテッド千葉の10億円でした。

この4クラブは、J2の中では規模の大きなクラブですが、対売上高の比率を見てみると、いずれも売上高の40%を越える額を人件費を費やしていて、いかに能力の高い選手を揃えているかがよく分かります。

また、上の4クラブには劣るものの、それに次ぐ規模を誇っているコンサドーレ札幌、広告料収入と入場料収入の増加で売上を大きく伸ばしたアビスパ福岡も、人件費が大きく伸びています。

さらに、下位のクラブでも讃岐、J3から昇格してきた金沢も大きく人件費を増やして、優れた選手を獲得するために力を入れていることが分かります。

勝ち点1あたりの人件費

勝ち点1とるために必要な人件費の順位です。
少ない出費で勝ち点1を取れるクラブこそが、経営上手なクラブです。

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結果は、愛媛FCが第1位でした。
人件費ランキングで2.7億円で18位なのに対して、プレーオフ圏内の5位でフィニッシュしたためです。

ただ、この結果はクラブを上手くマネージメントした結果と言うより、選手、監督、コーチにおんぶにだっこで、現場で大きな成果を上げたことに、クラブがついていけなかったために、たまたまそうなってしまっただけです。

愛媛FCは、未だに経営面が脆弱すぎます。
一刻も早く売上を伸ばして、監督、コーチ、選手の獲得資金を安定的に確保できるようにして、現場の頑張りとバランスが取れるようなクラブにならなければ、強いクラブにはなれません。

このことは、他の上位になったクラブにもあてはまります。
J2の各クラブは、毎年少しずつ大きくなっていますから、現状維持ではいずれJ3に落ちるのは目に見えています。なので、スモールクラブは、リーグ全体の発展に取り残されないように、できるだけ早く、経営基盤を強くして、一定の経営規模を確保するようにすることが大きな課題になります。

一方で、下位を見てみると京都、千葉、セレッソが並びました。
多額の人件費をかけているにも関わらず、J1に昇格ができていない現実があります。

ここは、スモールクラブとはまた違った問題があり、十分な選手を揃えながら勝ち点を拾えないという、現場のマネージメントがが上手く行っていないという悩みがあります。

「お金があるからいずれは好転する」と言う楽観的な考えもできますが、京都は今年で降格から6年目、千葉に到っては降格から7年目ですから、現場のマネージメントをどうするかという方針がしっかりしていないと、なかなか昇格を果たすのは難しいという現実があります。

まとめ

J2リーグで勝ち点1あたりの人件費の額が少ないクラブには、愛媛FCをはじめとするスモールクラブが並びました。
一方で、人件費に多額を費やしているクラブでも簡単に勝ち点が取れない現実があり、J2を勝ち抜く難しさが経営のデータでも見て取ることができます。

おまけ

ジェフユナイテッド千葉の関塚隆監督解任のニュースが流れました。
スモールクラブはほんとうに苦しいですが、大きなクラブは大きなクラブで違った難しさがあります。

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